 | 現在,気象を考慮したルーティングは,気象会社によって行われています。これは,積み荷の安全確実な配送とともに「スピードクレーム」が発生した場合の保険という意味も含まれていることは,良く知られていることだと思います。
ここでは,そのような切り口ではなく,コスト削減の面から気象予報を考え直してみます。これは,何もここで初めて述べることではなく,古くから言われていることではありますが,情報化時代を迎えて,今一度考えてみるのも面白かろうと思った次第です。
気象を考慮した航路作成のコスト削減はいかほどか? 一般には,気象を考慮した航路作成では,北太平洋を例にとると約2〜4%の燃料削減になると言われています。即ち, 1航海の燃料費削減費用=1航海の燃料費×3%
となります。仮に1日の燃料費が80万円で10日間の航海とすれば,800万円の3%である24万円の削減が見込めることになります。
しかしながら,これだけではなく「燃料消費が少ない分航海時間が短縮される」という余得があることがわかります。仮に1航海で8時間航海所要時間が短縮されれば,1日あたりの船舶コストの1/3が浮く勘定になります。例えば,1日あたりの船舶コストが210万円だとすると,1航海で70万円の船舶コスト削減になるわけです。この効果は,直接費用に反映されるというわけではなくても,船舶の稼働率向上として,それを上回る結果が現れてくるわけです。
なぜ気象を考慮すると航海所要時間を短縮できるのか
良く知られているように,船舶は波浪によって減速されます。台風が近づいたときなど,15ノット以上の速力がほんの数ノットに落ちてしまう経験をされた方は多いと思います。もちろん危険を感じ,意識的な減速もあるでしょうが,そうでなくても速力は低下します。どの程度低下するかは,船舶によって異なることではありますが, − 波の高さ − 波の方向 − 波の周期 が大きく関係してきます。
従って,航海計画を立てるときには,出来る限り波の低い海域若しくは減速が少ない方向の波の海域を通過することを考慮することが必要です。しかし,波の予報精度はせいぜい3日程度ですから,航海中も逐次航路を見直すことが必要となります。
気象会社によるルーティングはこれを考慮しているか? 考慮しています。しかしながら,一番の問題点は「各船舶固有の波浪中減速特性が正確にわからない」ことと「海象の現況が陸上では体感できない」ということでしょう。一番望まれることは,本船の運動特性を熟知しており,なおかつ海象の現況を体感できる「乗組員」が気象予報を基に航路計画を作成することが一番良いと言うことが言えます。
なぜ乗組員による気象を考慮した航路計画作成ができないのか
気象を考慮した航路計画作成には, − コンピュータによるシミュレーション − コンピュータに取込可能な気象予報情報 が必須です。
しかし,現状ではいずれも船舶に充分に浸透しておらず,従って実現が難しいと言うことになります。上記に更に付け加えれば「乗組員でも操作が可能な簡単操作のソフトウェア」も必要でしょう。今後これらのツールと情報配信により,気象面からのコストセービングも積極的に考えなければならない時代となりましょう。
さらに大きな隠れた余得
波浪中を航行するときには,主機の負荷が大きくなります。自動車のエンジンなどは,その最大性能に比べての実稼働状態の負荷は軽いものですが,船舶の場合は80〜85%程度とかなり負荷が大きくなっています。このことは,船舶の場合には負荷に余裕が少なく,波浪等の大きな負荷に対してはダメージを受ける確率が非常に高くなると言えます。従って,波の低い海域を選んで航行すれば,主機や更には船体にとっても有効なことであると言えます。主機の故障のみならず,注油率を削減できることにもなるでしょう。問題は,その効果が具体的な数字として報告されていない点にあります。しかし,ほとんどの知識人が上記のような効用を支持していることから,今後は主機や船体の負荷の面からも,気象を見直す風潮になるでしょう。
マリンフォネットは 乗組員自身による 気象を考慮した航路作成が可能となる ツールと 気象予報情報の配信をお手伝いしています 
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